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プロ格闘家を目指す - 東大に入るより、遥かに険しい道を選んだ君へ

  • 執筆者の写真: Danny
    Danny
  • 5月13日
  • 読了時間: 7分

更新日:6月8日



「いつか ONE CHAMPIONSHIP、ルンピニー、ラジャダムナン、UFC、K-1、RIZIN……

で戦う」...そんな夢を見るのは素晴らしいことです。


ただし君には、残酷な現実を知ったうえで、その夢を追いかける覚悟が本当にありますか?


まず初めに、誤解のないようにお伝えしておきます。本稿でたびたび比較の対象として登場する「東大(東京大学)」という存在は、けっして本質的な価値を称賛しているわけではありません。むしろ、学歴そのものに未来があるとは言い切れない時代であることは、誰の目にも明らかです。

それでもなお、東大を引き合いに出す理由はただ一つ : 閉鎖的で古臭い価値観から抜けきれていない現代の日本において、いまだに最も“わかりやすい到達点”であり、誰もが知る社会的ベンチマークだからです。

東大合格に本質的な価値があるわけではない。社会がそこに価値を感じているーその現実があるというだけの話です。


数字が語る、プロ格闘家になるという現実の壁

東大には、毎年およそ3,000人が合格します。偏差値という指標があり、自分の立ち位置が客観的にわかる。全国模試の成績を見れば、どれくらいの努力が必要かも予測できる。受験産業という巨大なシステムの中で、参考書や塾、予備校など、整備された“正解ルート”が提供されています。

たとえ地方に生まれても、裕福でなくても、本人の努力と工夫次第でなんとかなる構造になっています。つまり、「努力が報われやすい」仕組みが社会的に保証されているのです。


大学受験の方が楽?

一方、格闘技の世界 : K-1、RIZIN、ONE Championship、ルンピニー、ラジャダムナン、UFCなどのメジャーイベントで王者になるためには、どうでしょうか?

まず、正解が存在しません。何をどれだけやれば到達できるのかが、まったく見えない。偏差値もなければ合格最低点もない。マッチメイク、契約、怪我、所属ジム、プロモーター、団体内の政治、、、あらゆる外的要素が入り乱れ、実力だけでは勝ち上がれない場面が無数に存在します。

年間で王者になれるのは、K-1やRIZINで数人。ONEに至っては、世界中から選ばれた“たった数人”。 東大合格者が毎年3,000人いる現実と比べれば、その狭き門は想像を絶します。

つまり、東大は努力でたどり着けるが、格闘技の頂点は努力だけでは絶対に届かない世界なのです。

ここが、両者の決定的な違いです。


幻想に踊らされていないか ー 甘い憧れの代償

今、日本の若者たちの間で「プロ格闘家になりたい」と言う人が増えています。その多くが、YouTubeの動画やSNSで見た派手な試合や華やかな入場に影響を受けて、ただの憧れだけでジムに足を運んできます。

しかし現実はどうでしょうか?

最近では、基本的な運動能力が著しく低い若者が目立ちます。反射は鈍く、筋肉の使い方も知らず、走ればすぐにバテる。そんな子どもが「プロになりたい」と口にする。驚きを通り越して、もはや唖然とする場面すら少なくありません。


子どもの運動能力は、幼少期にほぼ決まります。神経系はおよそ12歳前後で完成し、体幹やバランス感覚、敏捷性もこの時期に形成されます。つまり、10代後半から何とかしようとしても、すでに手遅れなことが多いのです。

かけっこ、綱渡り、木登り、ドッジボール、野球、バスケットボール、器械体操、水泳……ありとあらゆる身体遊び・スポーツ経験を通じて、運動神経は磨かれていくものです。


ロマチェンコの父親は「より多くのスポーツ経験を幼少期に積ませるほうが、運動神経の発達に役立つ」と考え、ロマチェンコには子どもの頃、あえてボクシングをさせなかったー というエピソードは有名です。

当ジムでも、たとえば「野球の投球動作をイメージしてごらん」「反復横跳びの感覚だよ」「バスケットのフットワークに近いよ」といった比喩で教えても、ピンとこない子が増えています。 やったことのない動作を例えられても、わかるはずがありませんよね?


やはりその根本には、「子ども時代にまったく運動をさせてこなかった家庭や社会の姿勢」があるのではないでしょうか。

「本人の意思を尊重したい」「無理強いはしたくない」ー そう言って放任してきた結果、基本的な身体能力すら育たないまま思春期を迎える。 にもかかわらず、動画で見た格闘家に安易に憧れてしまう。

厳しいことを言いますが ー それは、構造的敗北と言って良いでしょう。


周囲の大人たちへ ー 無責任な希望を押しつけていないか?


いやいや、世の中そんなに甘くない!
いやいや、世の中そんなに甘くない!

この場を借りて、強く申し上げたい。子どもに夢を語らせて悦に浸っている“周囲の大人たち”へ、これは警告です。


「君ならきっとできるよ」 「努力すれば夢は叶う」 「自分を信じなさい」……


そんな言葉を、軽々しく口にしていないでしょうか?その言葉の裏に、どれだけの現実と責任が込められているか、しっかり考えたことがありますか?


誰もが井上尚弥になれるわけではありません。誰もが那須川天心になれるわけではありません。ましてや、誰もが大谷翔平になれるわけでもないのです。

あなたの子どもが、あなたの教え子が、YouTubeで見たスター選手に憧れてその道を歩もうとしたとき、あなたは真っ先に「その道がどれほど険しいか」を伝える義務があるのではないでしょうか?


トンビは、決して鷹を産みません。

あなたにさしたる才能がないのであればその子に受け継がれるものもほとんどないでしょう。もちろん例外はあります。しかし、例外が例外であるがゆえにニュースになるのです。凡人が奇跡を起こすことは「奇跡」なのです。


親も教師も指導者も、「無限の可能性」などという曖昧な言葉で、子どもを希望の檻に閉じ込めてはいけません。子どもには、「努力が報われる世界」と「努力しても報われない世界」があるという現実を、正しく教えなければならない。

それは夢を奪うことではありません。むしろ ー 現実を知った上でなお挑もうとする、“本物の覚悟”を育てることに他なりません。

夢を語るなとは言いません。しかし、その夢の先に待っている茨の道を示すことこそ、大人の務めではないでしょうか?


それでも夢を追いたいなら ー The Campという選択肢

駿台や河合塾に通っても、東大に必ず合格するとは限りません。

大橋ジムに入門すれば井上尚弥になれるわけではないし、テッペンジムに行けば那須川天心になれるわけでもない。ましてやスーパーボンのジムで練習すればONE Championshipに出れるかも?なんて思うのは、ただの幻想です。


The Campに来たからといって、未来ある格闘家人生が保証されるわけではまったくありません。


ですが 人間とは、本質的に「希望」と「可能性」に賭ける存在です。そして同時に環境の産物でもあります。

私たちは、運以外のすべて ー 技術、体力、減量、メンタル、戦略、生活管理 ー このすべてをチームとしてサポートする体制を整えています。


正直に言います。The Campの練習は、日本のそれと比べてかなり厳しいです。でも、たかだか1日6時間程度のトレーニングで音を上げているようではこの世界では到底やっていけません。特に、才能のないただの一般人には、想像をはるかに超える努力が必要なのです。


お前らが休んでいるとき、俺は練習している。 お前らが寝ているとき、俺は練習している。 お前らが練習しているときは、当然俺も練習している。」 ─ フロイド・メイウェザー


現役時代50戦50勝。 天賦の才能に恵まれていた彼ですら、これほどまでに練習に身を捧げていたのです。

そう、才能のない君たちには、「努力しない」という選択肢はないのです。


最後に。。。君に、人生を懸ける覚悟はあるか?

血反吐を吐くような練習を何年にもわたって続け、人生で最も楽しいはずの青春の時間を格闘技にすべて注ぎ込む。それでも結果が出ないかもしれない。いや、むしろその可能性のほうが圧倒的に高い。

それでも「やる」と決めたなら、この残酷な現実を受け入れてください。そして、選手を支える周囲の大人たちやご両親も、同じ覚悟を持って見守ってください。

この世界には、中途半端な気持ちで立てるリングは存在しません。 結果に対して、すべての責任を負う覚悟がある者だけが、この門をくぐる資格を持ちます。

中途半端な気持ちのままで来るなら、それは、ただの時間と金の無駄です。


もちろん、すべての人がチャンピオンを目指しているわけではありません。本稿は、あくまで「人生を懸けて戦う覚悟を持つ者たち」に向けたメッセージです。

ビギナーの方や、上達したい、健康になりたい、ただ純粋にムエタイやキックボクシングを楽しみたいという方には、まったく別の扉がここにはあります。

ムエタイやキックボクシングを通して、自分の身体と向き合い、成長を楽しむ。

そんな向き合い方も、The Campは、すべて受け入れています。

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