タイ人と働く
- Danny
- 2024年4月1日
- 読了時間: 13分
更新日:4月25日
さてタイに来て7年近くになりました。もちろん私もずっとこちらにいるわけではなく、様々なプロジェクトで世界中を飛び回っていることが多いのですが、とはいえ通算するとここ数年はタイにいる時間が一番長くなって来ました。そこで今日はタイ人と働くということについて自分が感じたことを書いてみたいと思います。

実はタイに来る前に「タイ人と働く」という同名の本を人に勧められて読みました。
副題が「ヒエラルキー的社会と気配りの世界」(笑) 読んでみた感想は、
「うわ、かなり面倒くさい人たちだな。」
さて、実際はどうかと言いますと、、、
はい。その通りめちゃくちゃ面倒くさい人たちです。
タイに来る日本人観光客の多くはみな口を揃えてこういいます。
「タイっていいよね。微笑みの国タイ。みんなニコニコしてて、タイ人に悪い人なんていないよね〜タイだーいすき。。。」
そう、第一印象が非常によい人たちなのです。
タイで暮らしてみてすぐにこれは幻想であったということに気がつきました。
まず、典型的なタイ人の特徴について:
(1)微笑みには裏があります。
タイ人の笑顔に騙される日本人は多いですが、愛想のいい人こそ気をつけるべきだとこの国に来て学びました。笑顔の素敵な人こそ腹黒いです。これは本当です!
微笑みについてのおもしろいリンクがあったのでご参考まで。
(2)嘘つきです。
基本的にタイ人は平気で嘘つきます。それもほぼ例外なく。タイ人で嘘をつかない人はごくわずかです。「嘘つきは泥棒の始まり」という言葉は学校や親から教わらないの?」とうちのスタッフに聞いたら、無言でした。でも仏教国ということもあってか、あまり大きな派手な嘘はつけないようです。良心の呵責でしょうか、ちいさな、せこい嘘が大半です。
(3)見栄っ張りです。
わからない、知らないのに、知っているフリをします。
でも総じて物事の理解度は低く、知識は曖昧で、こちらが質問したり、突っ込むと実は本人もわかっていません。でも知らないとか、わからないとは絶対に言いません。あくまでも自分は知っているで通そうとします。日常生活ならまだしも仕事となるとこれが面倒なのです。
また人前で叱られたりするのがすごく嫌な人たちです。プライドが非常に高く、特に比較的高学歴なタイ人にこの傾向は強いです。なので人前で扱きおろされようものならその反発たるやものすごいものがあります。
(4)謝りません。
何があっても決して謝らないという「不屈の意思」をもっています。
ごめんなさいが絶対に言えないのです。とにかく自分の間違いを絶対に認めない。
聞けば、子供の頃から安易に人に謝らないように育てられるとか。。。
「謝ったら自分が間違いを認めたことになり、アホとか無能だと思われてしまい、社会的地位や信用までも失う可能性があるので絶対に謝ってはいけないのだ」と、普段からミスが多く絶対に謝らないうちのスタッフがドヤ顔で説明してくれました(汗)
(5)言い訳します。
言い訳文化です。とにかくできない理由や間違った言い訳を延々として、自分は悪くないと主張します。ただだいたいがその場しのぎで、ロジカルでないので、すぐに矛盾を突っ込まれます。分が悪くなると、話をすり替えたり、最後は情に訴えるという変則プレーも得意です。ちなみに私の知りうる限りタイに来て今までいい訳をしないタイ人に出会ったことがありません。
(6)悪口が得意です。
とにかく人のせいにして、自らを正当化します。自分のポジションを有利にするためには仮想の敵が必要なので、とりあえず手っ取り早くその場にいない人のせいにします。普段は仲よさそうでも、本人のいないところでの人の悪口は凄まじいです。私も相当、影で悪口を言われているんだろうなぁと感じつつ、毎日なるべくニコニコして過ごしております。
(7)本能に忠実です。
みんな基本的に食べることと楽しいこと以外に興味はありません。それ以外はすべてセカンダリー。うちの犬に似ています。

(8)仕事がぜーんぜんできません。
タイのレストランやデパートに行くと、客もいないのになんでこんなにスタッフの数が多いのだろう?と思ったことはありませんか?
しばらくしてタイ人の労働生産性は恐ろしく低いということがわかりました。日本人なら一人で簡単にこなせる仕事も、こちらでは最低三人は必要です。また複数同時にタスクをこなせる人は皆無なので、必然的にタスク量に合わせて人が増えることになります。
人件費は日本の1/3~1/4でもタイではその分人数が必要なことを考えればトータルの人件費はさほど日本と人件費は変わらないかもしれません(涙)
そして不器用なので目の前のタスクが終わらない限り次には進めません。
「先にこっちやって」なんてプライオリティの変更などしようものなら本人はもうパニックです。
自ら仕事を作り出したり、工夫してより効率をよく処理するという独創性に至っては絶望的です。基本指示待ち族なので、言われるまで動きません。また言われたことを言われた通り、かつ自分が慣れた経験済みの方法でこなすことしかできないので、別の方法を提案しても受け入れません。自分のやり方(オレ流)へのこだわりと頑固さは世界トップレベルです。もちろん仕事を通じて自分を磨くという努力もまったくしない現状マックスの人たちなので、時間をかけて人を育てるという日本のお家芸はあまりこの国では通用しません。
(9)何をやらせても遅いです。
何かタスクを頼んでも一向に完了しません。できたかできないかの報告もないし、それどころか終わってもいないのに定時になると逃げるように帰宅してしまいます。だいたいタスクがその日のうちに終わることは稀です。
さすがに「おい、いったいいつまでかかってんだよ!」と言いたくなることがよくありますが、でもそこはグッとこらえて「忘れてないよね?」と優しく聞ききます。
そこから「できない言い訳」が永遠と続きます。はぁ〜めっちゃ疲れます^^
(10)仕事が雑です。
エクセルやらせても書類の整理させてもお金の計算させても、ほぼ毎回どこかしら間違ってます(涙)
建築工事では、寸法違いなどあたりまえ。タイでは2インチまでは誤差の範囲なのだそうです。おいおいおいおいおい、2mmでなく2インチ?かよ(怒)とキレる気持ち、日本の方ならわかっていただけると思います。もちろん図面なんて基本無視ですから、いつの間にか当初の図面とは違うものができています。
それも何故か不思議なのですが、こちらが見ていないときほど作業が早く、あっという間に意味不明なものを作って、こちらの確認なしでワーカーたちは帰ってしまいます。
日本人気質の自分は時たまイラっとしますが、タイ人って地球上でおそらくもっともアドリブのきいた「アーティスト」なのかもしれない、と最近では自分に言い聞かせるようにしています。
(11)すぐ辞めます。
タイ人の離職率の高さは半端ないです。すぐ辞めます。一般的に1年もてば良い方で、今まで最短で2時間で辞めていったスタッフがいました。挨拶もなしに午後には消えていました。まあ1週間以内にいなくなるのはザラです。事前に2回も3回もインタビューに来て、いろいろな書類にサインしたのにすぐ辞めちゃうという感覚が意味不明ですが、彼らなりに言わせるといろいろな仕事について経験を増やしたいのだそうです。もちろんうちでの数時間も彼らの輝かしい職歴リストに含まれます。
(12)愛にあふれています。
ある日、スタッフが明日突然会社を休むと言いにきました。理由は母親を歯医者に連れて行くからだそうです。
この他にも「子供が熱出しましたー」「再従兄弟」の結婚式に出ますー」「お父さんの「又従兄弟」の親友のオバさんの葬式に行きますー(結局いったい誰?)」などなど、人のために会社をお休みする理由には事欠きません。ある日別のスタッフが給料の前借りに来ました。理由はお父さんにお金をあげるからだそうです。ねえねえ、お父さん、たった2000THBを子供にせびるんかい!(怒)
なんとも人類愛にあふれた人たちなのであります。
(13)恋愛体質です。
人生において恋愛がすべてに優先します。
毎日5~10回はガールフレンドに電話します。暇な時はずっと携帯いじってテキストしてます。たまにガールフレンドがオフィスにまでやって来たりします。一方、女性スタッフは毎日ボーイフレンドやご主人が送り迎えしたりします。うざいくらい超べったりです。
彼女とトラブったり、別れたりするとこれはもはや大事件。即時人生終了モードに入ります。完全に人体から魂が抜けます。こうなると彼らはもう何にも手がつきません。
最近、あるスタッフが彼女にフラれ、失意のどん底に落ち、無断欠勤2週間という最長記録を打ち立てましたが、毎月誰かしら惚れた、フラれたを繰り返すタイの人たちですから、また次の猛者がこの無断欠勤記録を更新するにはさほど時間がかからないと思います!
多くのタイ人が仕事=お金より「愛」を選びます。彼らタイ人にとってみれば「愛」に比べれば仕事とか社会的責任なんか所詮どうでもいいことなのです。
そうなんです。彼らは
人としてもっとも価値ある人生を生きているのです!!!
そんなお金より愛を大切にするタイ人はもちろん貯金はゼロ。「宵越しの金は持たねえぜ」的な、気持ちのいい江戸っ子気質な連中です。ちなみに例のスタッフが彼女にフラれた原因は、彼の「経済力のなさ」だったそうです。。。
タイあるある、とってもおっちょこちょいなエピソードです。
(14)浮気性です。
恋愛体質なのですが、一方で過剰な情熱とのバランスをとるためでしょうか、タイ人男性はほぼみんな浮気します。他方、タイ人女性は嫉妬深いことで有名。もし万が一、浮気が見つかれば間違いなく阿部定の刑。
なので男たちはクラブなどに出かけると、まず最初に男同士で写真を撮りまくります。
さらに毎回違うアングルで何枚も撮り溜めします。
これは、最初の一枚は「今、友達と飲んでるよ〜」という証拠写真。
でも妻やガールフレンドもその辺りはよくわかっているので、「ねえ、もう一枚送って!」というカウンターパンチが飛んで来ます。だからまずはそのためのリスクヘッジ用の写真をせっせと撮り溜めるのです。
ただ中にはツワモノもいて、「15分ごとに写真送ってね💗」なんていう高度な技を仕掛けてくる女性もいます。
それでもタイ人男はめげません。あえて女性のいない壁を背にして、色々なアングルから男同士で写真を撮って、愛する妻やガールフレンドに送り続けます。
そう、彼らは打たれても打たれても諦めずに前に出る真のムエタイ戦士たちなのです。。。

※ちなみにチェンマイにはホストクラブも何軒かあるようです。地元の方に聞いたところ、欲求不満のお金持ちの奥様たちで連日大賑わいだそうです。
そういえば最近は女性のムエタイも流行っているようですし、タイも肉食系女子が増えているのかもしれません。
さて、随分前置きが長くなりましたが、日本人から見ればタイ人は我々とはかなり異なる人生観や考え方をもっている、というのがわかっていただけたかと思います。
さてこの愛すべきタイ人たちとどうやって働くか?いうのが今日のテーマでした。
これに関しては、正直自分にもまだこれといった結論はでていません。
ただ一つだけ自信を持って言えることがあります。
「彼らととことん向き合うこと」
実はタイに来る前、タイ在住の先輩方から以下のようなアドバイスを受けました。
タイ人と働く時は
1. 怒っちゃダメ
2. 適当に褒める
3. いつもニコニコしてる
4. 直接、個別に部下にガミガミ言ってはいけない。組織のリーダーに任せる。
最初は全部その通りやってみましたが、結論からいうと、これらのアドバイスは全部無駄でした。そりゃあ喧嘩したくなければニコニコしているのが1番に決まっています。
私から言わせれば、タイ人ととことん向き合う勇気も情熱も根気もない、日本からやってきて任期中に自分の任務を適当にそつなくこなす日本人が取りうる、リスクのもっとも少ない都合のいい言い訳にすぎないのです。
この7年、自分なりにもがきながら大事なことに気がつきました。
スタッフが悪いことをしたり嘘をついた時は叱るのが当然です。いつも褒めてばかりでは調子に乗る一方です。ニコニコばかりしてたら舐められます。リーダーに任せるというのは聞こえはいいですが、逆に言えば自らがコミットしていないことになります。
日本人が大好きな山本五十六は「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」という言葉を残しました。でも実はミッドウェイ海戦の折、山本が作戦を南雲に一任したために帝国海軍は致命的な敗北を期してしまったのです。こういった歴史の失敗から学ぶことは多くあります。
そしてこれは日本の外交政策(特にアジア外交政策)とも重なるのですが、何事も摩擦を回避すべく、言いたいことをはっきり言わずに、聞こえの良いBullshit talkに終始していても相互理解と関係の発展にはつながらないということです。外務官僚の典型ですが、議論の衝突が怖くて毎回ヘラヘラしてたら相手に舐められるのはあたり前。外交でも仕事でも時には一歩も引かない毅然たる態度が求められます。
今は徹底的にタイ人と向きあうということを自らに課すようにしています。
2時間でも3時間でも彼らの言い訳に付き合って、同時に徹底的に相手の話を聞くようにします。もちろん向こうが自ら非を認め、謝るまでこちらも絶対に引かない覚悟で臨みます。
こちらには正義があります。なのでこちらが絶対に論破されることなどないのです。
内心、彼らは嘘をついたり、ルールを破った罪悪感があるので、大抵の場合は翌日には向こうから折れて来ます(負けず嫌いな人たちなのでその日は絶対に折れて来ません。あくまでも翌日以降です!)
ザ・キャンプでは、嘘をつかない、過ちを認めてすぐに謝る、言い訳しない、人の悪口を言わない、怠けない、の5つのルールをジムのスタッフ規律の中に取り入れ、徹底させています。
タイ人とぶつかるといつも決まって「これはタイのカルチャーなんだよ」としたり顔で言われます。
アメリカの思想家テレンス・マッケナは「Culture is not your friend」と言いました。
何でもかんでも自分に都合の悪いことをカルチャーの違いとしてすり違えるということは許されないのです。カルチャー云々の前にみな一人の良識ある人間たるべきなのです。

タイ人は我々日本人とは考え方も価値観も大きく変わります。
同じアジア人でありながら、むしろ日本人とは180度真逆と言っても良いかもしれません
でも結局のところ、決してわかりあうことのないであろうタイ人の国「タイ」になぜか惹かれてしまうのも事実です。
つっこみどころ満載のおっちょこちょいなこの国が妙に居心地が良くなってしまうのです。
タイの人々は、欲望と本能の赴くまま、人間の弱さをそのまま包み隠さず、あるがままに生きているからなのでしょうか?振り返ってみて、私が自分の心のどこかでそういう自由な生き方に憧れがあるのかもしれません。
ネットで話題になったCGでつくられた女子高生は完璧な美少女ですが、無表情でなぜか不気味です。
人間は無意識的に「不完全の美学」「欠けている美学」に共感を覚えるものなのでしょう。
タイ人の「粗雑さ」「不完全さ」が、この国を訪れる者にある種の安心感や共感を与えているのかもしれません。

厳しい見方が続きましたが、タイ人の屈託のない笑顔をみるとついつい心が緩んでしまう、そんな自己矛盾を抱えながらチェンマイでの日々をすごしています。
今日もチェンマイの人たちの笑顔は最高に素敵です。

ちなみにこのブログの最初の執筆時(5年前)に比べて2024年5月16日現在の私たちのスタッフは全員みんな本当によく働く、まさに選びに選んだ極めて優秀なタイ人です!本人たちの名誉のために明記しておきます。