この国の未来

最終更新: 2019年5月28日

タイでも有名なある資産家のファミリー宅にお招きいただいたときのこと。

オーナーの初孫となる可愛い2歳になる女の子の周りには、なんと3名ものベビーシッターがしかも四六時中ずっと付き添っていました。


そのときふと思いました。

「この子はここのうちの子に生まれてきて幸せだなぁ。彼女の人生は何があっても一生安泰だもの…」


そう、この国ではプリンセスに生まれれば一生プリンセスなのです。

屋台のヌードル屋の息子は一生ヌードル屋の息子。

これがこの国の変えようのない現実。


ある国際機関によれば、国民のわずか1%の人たちがタイの66%の富を保有するそうです。


いくつか理由がありますが、その一つにタイでは今まで相続税というものがなく、その結果、先祖代々、資産は子孫に引き継がれて膨らみ続けてきたということが挙げられます。

タイは金持ちはずっと金持ちのまま、貧乏人はいつまでたっても貧乏人、という格差固定社会なのです。

ただ20162月から、1憶バーツを超える資産を相続する場合、その相続人に対し10%、相続人が直系尊属または直系卑属の場合には5%が課税されるようになりました。

とはいえ、日本の相続税に比べれば微々たるもの。この程度の相続税を課したところで、この格差固定社会構造に何の影響も変化もないでしょう。というより法律を決める側が格差社会の上部階層にいる人たちですから、自分たちの特権を奪うことなどそもそもする理由がありません。長年にわたってこうした格差の固定を好ましいと思う既得権益者層が社会の新陳代謝を妨げているのです。


若い学生たちはこの国の未来についてどう考えているのか、ずっと気になっていました。

結論から言えば、今の若者たちはもう完全に骨抜き状態のように見えます。

例えば、この国を担う前途ある彼らに将来の夢を聞くと、あまりに志が小さくて悲しくなる時があります。


最高学府に学ぶ、決して少なくない数の学生が「カフェのオーナー!」と元気に答えます(笑)←これホントの話。

「うーん、夢は特にありません」とにっこり笑顔でハキハキ答える学生が多いのにもびっくりしました(汗)


さて、一方、若者たちにとって、タイで新たに事業を起こすのはあまりMake Senseしないようです。もっともどの業界も新規で参入するにはハードルが高く、そもそもモチベーションが湧きません。タイでは既得権益者層を脅かさないよう、新規参入者には何重にもハードルが設けられており、膨大な提出書類と重箱の隅をつつくような審査が永遠と続き、それらを一つ一つクリアして事業スタートアップするまでの道のりがあまりに長いのです。スタートアップ天国のイスラエルなどと比べるとその差は天と地ほどあります。


なので多くの学生は、有名な大学を優秀な成績で卒業しても、手っ取り早く、給与が安定していて誰もが知っている大企業のサラリーマンを目指します。(ちなみにトヨタとか日系企業の人気はいまだに高いです)

結果的に、優秀な人材が大企業に集まる➡︎タイの大企業はファミリー企業が多く、結果オーナーファミリーがどんどん富んでゆく➡︎格差は固定する、と言うとてもシンプルでわかりやすい構図にもなんとなく頷けます。


もちろんそういった金持ちファミリーの子息はそもそも将来のことなど何も考える必要はありません。普通に親の資産やビジネスを受け継いで、卒業してからも悠々自適な人生が待っています。何と言っても彼らは生まれた時から王子様、お姫様ですから。


ある学生は毎年冬にはニセコにスノボに行って、寿司や和牛に舌鼓を打ち、現地で豪遊。

別の学生は物見遊山でボストンやスイスに留学。

高校卒業したての18歳の女子学生でメルセデスベンツで通学している子もいます。

余談ですが、最近の東京~バンコク便では、だいたいエコノミークラスが日本人、ビジネスクラスはほぼタイ人で占められます。


もちろんみんな親の金。

タイあるあるの、親に甘やかされて育ったロクでもない子供達ですが、今の格差固定社会では25年後はやはりこの子たちが社会の上層部を占めることは間違いありません。


「子孫に美田を残すべからず」という戒めがありますが、とはいえ親バカは世界共通で、頭では理解していてもやはり自分の子供たちには資産を承継し、安泰に暮らしてほしいという動物の種族保存本能が結果的に優先するのでしょう。

人間の執着とはとことん卑しくおぞましいものだと思います。


とはいえ、日本にも格差が固定していた時代が長くありました。

もちろんどんなに安定している社会制度でも時代の変化とともに制度疲労していくことは歴史を見れば明らかです。

江戸開幕から265年の時を経て、この国の未来を変えたい、という志ある下級武士たちによる明治維新がなされ、士農工商という格差固定制度は崩壊し、日本が近代国家への道を歩み始めたのは時代の必然であったといえます。


自分は社会主義者でも共産主義者でもありません。

むしろ長年、自由経済主義者、市場原理主義者に近い立場をとっていた人間です。

なので格差社会も否定しません。

能力があって、お金を稼げる人はどんどん稼げばいい。

自分の不遇を環境のせいにして文句を言い、何も努力せず現状に甘んじているような負け犬に手を差し伸べる気など毛頭ありません。


ただ、どんな社会にあっても格差が固定してしまってはいけないと思っています。

本人の努力と才覚で人生を切り開いていけるような社会であって欲しいのです。

親の七光りだけでボンクラが安穏と生きていけるような社会であってはいけないのです。


底辺から苦労してのし上がった人の中には、時に成金という道に外れていく人もいますが、多くが貧しかった頃の自分を知っています。私の知るタイの成功者の中にも社会還元を通じて世の中に恩返しをされている立派な方もいます。


でも成功者である彼らの子供たちの人生もまた親とは別であるべきなのです。

彼らの子供たちが育った大邸宅の真向かいのヌードル屋の息子が、不断の努力を重ねて成功し、人生の大逆転が実現するようなワクワクする社会であって欲しいのです。

アメリカ大統領リンカーンの子孫の行く末など、アメリカ国民のほとんどが知らないでしょう。先祖の功績とその子孫の人生とは何も関係ないのです。

一代で世界一の資産を築いたウォーレンバフェット。もちろん彼の資産のほとんどは彼の娘には受け継がれません。

これがアメリカのダイナミズムであり、彼の国の成長エネルギーの源泉はこの新陳代謝によるところも大きいのだと思います。


2004年、ご縁あってインドのマンモハン・シン首相と面談する機会がありました。

デリーの首相官邸に行く道すがら、当時財務官であった榊原英資氏が「ある国の25年後はその国の子供たちの目を見ればわかりますよ」と言われたことを今でも覚えています。

車の外に目をやると、道路脇に溢れるインドの子供たちの目は文字通りキラキラしていました。会談中にシン首相にその話をすると嬉しそうに頷いておられました。


あれから15年。インドのGDP成長率は概ね7~8%で推移しています。このまま年率7%の成長が今後も10年続けばGDPは今の2倍となり、インドは世界有数の経済大国となります。

当時からちょうど25年後の姿がそこにあります。


さて、翻ってタイの子供たちの目は ?


タイに来られたらぜひ道端の子供たちの目をのぞいてみて下さい。

彼らの目の奥にはきっとタイの新しい未来がある、と僕は信じています。



この子の未来も輝かしいものでありますように。

PS.先日、うちのトレーナーDeeに待望の男の子が生まれました。名前はTiger !!!

Tigerには2歳からムエタイを教えて、ムエタイ選手にすると張り切っています^^


事情があって、子供とは別々に暮らす人生を選んだDee。

でも彼は子供のために自分の給料の半分を仕送りし続けると言います。


いつかTigerが大きなスタジアムで活躍する姿を楽しみにしています。






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